関節リウマチは「遺伝する病気」なの? 母が関節リウマチなのですが、私もいずれ発症するのでしょうか?

2024年9月11日

どのような遺伝子における異常が関節リウマチの発症に影響するのか・・・を考えるには、関節リウマチの発症メカニズムを少し知る必要があります。

 

関節リウマチは、いわゆる自己免疫疾患の一つです。自己免疫・・・とは、私たちの身体は免疫という仕組みを持っており、体内に入ってきた細菌やウイルスなどの外敵に対して様々な形で攻撃する多数の白血球を急ぎ育成し(軍隊の部隊を作るというイメージです)、白血球がミサイルを打ったり、直接外敵を食べたりして駆逐します。この免疫という仕組みがあるので、感染に打ち勝ち、ヒトは生物界においてここまで進化してこれたのです。非常に効率的に効果的に外敵を駆逐することのできる軍隊をヒトは短時間で作り上げることができるのですが、免疫が我々自身の身体の一部を外敵とみなし、軍隊を作ってしまったら大変なことになりますよね。そんなことが起こらないよう、数百の遺伝子から数百の蛋白が作られ、免疫が我々自身の身体を外敵とみなさないよう様々な予防線が張られているのですが、この複数の予防線が破れた時に、自分の身体に対する免疫、自己免疫、が作られてしまいます。

 

ですので、一部の遺伝疾患のように、たった一つの遺伝子における異常の有無が病気の発症に大きく影響する・・・というものではなく、免疫に関係する多くの遺伝子ひとつひとつにおける微々たる異常(単独では発症リスクへの影響は小さい)の積み重ねが、発症リスクを高めます。そのため、「母親が関節リウマチだったから私も高確率で関節リウマチになる」というわけではなく、免疫に関係する多数の遺伝子について、母親から引き継いだ遺伝子と父親から引き継いだ遺伝子すべてを見渡したとき、どのくらいの量と質の異常がお子様に存在するのか・・・が重要です。

 

その結果として、1親等の家族に関節リウマチの方がいる場合は、そうでない場合に比べ、関節リウマチを発症するリスクが3倍程度、2親等の家族に関節リウマチの方がいる場合はそうでない場合に比べ2倍程度、という統計データが示す通り、そこまでリスクは高くないのが実際です。「リスクが3倍」というとびっくりされるかもしれませんが、「一生涯で関節リウマチを発症するリスクは女性で3.6%、男性で1.7%」というデータにもとづきますと、例えばお母様が関節リウマチを患っていらっしゃる場合、娘様が一生涯で関節リウマチを発症するリスクは10.8%、息子様は5.1%という計算になります。

 

また、関節リウマチ以外の自己免疫疾患も、関節リウマチと遺伝的背景が似ています。免疫が我々自身の身体を外敵とみなさないよう様々な予防線が張っている数百の蛋白を作っている多くの遺伝子における微々たる異常の積み重ねの上に、様々な環境的要因が重なり、発症します。ですので、ご家族に関節リウマチの方がいらっしゃる場合、ご自身に関節リウマチが発症するリスクは先ほど述べましたが、関節リウマチ以外の自己免疫疾患を発症するリスクもやや上昇します。

1親等の家族に関節リウマチの方がいる場合の発症リスク:

  • 全身性エリテマトーデス:一般人口の2〜3倍
  • 自己免疫性甲状腺疾患(バセドウ病、橋本病):一般人口の2〜4倍
  • 1型糖尿病:一般人口の1.5〜2倍
  • 多発性硬化症:一般人口の1.5〜2倍
  • 乾癬性関節炎:一般人口の2〜3倍
  • 強直性脊椎炎:一般人口の1.5〜2倍
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