2024年9月10日投稿
普段健康に過ごされている中で、特に誘因なく手や足の関節の痛みが出現し持続したら、「原因が何なのか」、「これからずっと続くのか」、「変形してしまうのではないか」、と心配になってしまいますよね。
「関節リウマチ」という病気は有名ですが、関節に痛みをもたらす病気や状態は多くあります。関節が痛むからといって、すべての場合が関節リウマチでは決してありません。中には自然に軽快するものもありますし、関節リウマチとは別の治療を要するものもあります。
関節痛の様々な原因(主なもの)を下に列挙いたしましたが、これらを含めた広い視野で、症状、経過、身体所見を踏まえて可能性のあるものに絞り、それらの可能性を吟味するために更なる検査(血液・画像検査所見など)を行い、原因を究明します。場合によっては評価の時点でははっきりとした原因が特定できず、「その後数ヶ月の経過」も含めて原因の更なる検討を要する場合もあります。
関節に炎症を伴わないもの
- 外傷(関節付近の骨折、靭帯損傷、半月板損傷、脱臼など)
- 変形性関節症(骨の先端にある軟骨がすり減ってくるもの、膝や股関節、手指の関節(へバーデン結節、ブシャール結節など)
- ホルモンの異常
- 甲状腺機能の異常
- 副腎不全
- 更年期障害
- 関節自体には異常がない場合
- 線維筋痛症
- 身体症状症
- うつ病
- 風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症のときなどの「ふしぶしの痛み」
- 小児期の成長痛
関節に炎症を伴うもの
- 感染が原因の炎症
- 黄色ブドウ球菌、淋菌などの細菌感染(局所の傷からの感染、血液を介しての感染、など)
- ライム病ボレリアによるライム病(マダニにより媒介される、本州中部以北が主)
- 風疹や、リンゴ病を起こすパルボウイルスB19(大人で感染すると関節炎をきたすことが多い)
- 結核(免疫が落ちている場合)
- 感染が原因ではない炎症
- 析出した結晶が引き起こす炎症(痛風や偽痛風など)
- 免疫が自分の関節組織などを攻撃するために引き起こす炎症(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、全身性強皮症、多発性筋炎、乾癬/クローン病などに合併する関節炎、強直性脊椎炎などの様々な膠原病疾患)
- 免疫ではないが、自分の関節内で勝手に炎症を起こす疾患(家族性地中海熱などの遺伝性の疾患)
炎症の有無で大きく分けたのは、その違いにより症状に若干違いが生じうるからです。例えば、炎症を伴う場合は使っているときよりもむしろしばらく使わなかった後(つまり起床時やしばらく同じ体位をとっていた後に動き出すときなど)のほうが痛みが出やすく、起床時の「手のこわばり」は特徴的な症状です。他方、炎症を伴わない場合では、例えば外傷や変形性関節症など、機械的な関節疾患の場合は、関節を使っているときやその後に痛みが強い場合が多いです。
炎症の有無に加え、症状のある関節の場所・分布も、原因によって異なります。例えば、関節リウマチでは手指の遠位指節間関節、いわゆる「第1関節」には滅多に症状は来ない一方、変形性関節症の後発部位です(へバーデン結節)。ただもちろん両者が併存する場合もあります。
症状の経過も、原因によって異なります。痛風発作のように治療をしなくても1〜2週間で自然に軽快してしまうものもあれば、膠原病疾患による関節炎のように治療をしなければ数週間から数ヶ月持続するもの、関節リウマチのようにもっと長く続くもの、などです。
関節リウマチは以下の特徴を持ちますが、他の一部の膠原病疾患や、ウイルス感染症(風疹、パルボウイルスB19など、1〜2ヶ月で軽快)、乾癬/クローン病などに合併する関節なども同様な特徴を持ちます。
・炎症を伴う
・左右対称性に上中大サイズの多くの関節に症状が及ぶ
・最初は程度も弱いが徐々に強くなり医療機関受診の意思を固めるまで数週間を要する場合が多い
・治療をしないと長期にわたって持続する
痛みが強いとき、または痛みが2週間以上持続する場合などは、ご自分一人で悩まれず、医療機関にかかり、ご相談されるのがよいでしょう。