[更年期の関節痛:治療] 狭義の「更年期関節痛」に対してはどのような治療がありますか?

狭義の「更年期関節痛」に対してはどのような治療がありますか?

狭義の「更年期関節痛」に対してはどんな対処・治療がありますか?

狭義の「更年期関節痛」に対して、以下のような対処があります。

生活習慣の改善:

過度の関節負荷(重いものを持ったり、仕事などにおける長時間にわたる反復使用など)があるのなら、それを避けることで痛みの軽減が図れる場合があります。また、定期的な運動や減量などの生活習慣の改善も、間接的にですが関節痛の改善につながると言われています。

痛み止め:

痛みが辛くて日常生活に支障を来たすようであれば、一時的にアセトアミノフェンなどの鎮痛剤やロキソプロフェンなどの消炎鎮痛薬(塗り薬、湿布、内服)により痛みを軽減させる必要がある場合もあるでしょう。しかし特に後者(消炎鎮痛薬)は、毎日定期で長期に渡り内服しますと、消化管、腎、心血管などに副作用を起こしかねませんので使用は必要最小限レベルに控えましょう。

ホルモン補充療法:

卵胞ホルモン(エストロゲン)を補充することは、そもそも狭義の「更年期関節痛」の原因メカニズムだと考えられている「卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌低下」を戻すため、関節痛を緩和し得ます(全員ではありませんが)。実際、日本産科婦人科学会による「ホルモン補充療法ガイドライン2017年度版」でに、「エストラジオール(E2)はホットフラッシュ以外に睡眠障害、関節痛、四肢痛改善効果を示す。」「HRT(ホルモン補充療法)は関節痛発症を予防する可能性がある。」と記載されています。ただその緩和の程度にも個人差があり、他方微少ながら血栓症や乳がん、子宮がんなどのリスク上昇も示唆されており、かかりつけの医師との慎重な検討・判断が必要です。

卵胞ホルモン類似物資(エクオール)

最近話題のエクオール(大豆イソフラボンに含まれるダイゼインが腸内細菌によって代謝されて生み出される成分)は、卵胞ホルモン(エストロゲン)そのものではないもののその受容体に弱く働きかけ、卵胞ホルモン(エストロゲン)の作用を一部再現します。狭義の「更年期関節痛」の軽減効果もある一方、ホルモン補充療法と異なり、ホルモン依存性のガン(乳がんや子宮がんなど)のリスクをむしろ下げる可能性も示唆されており、現在研究が進められています。エクオール製剤は保険適応ではありませんが、痛みが強い場合には、検討する価値はあるかもしれません。

最後に

狭義の「更年期関節痛」の痛みについて詳しく書きましたが、重要なのは、「それ以外の関節痛の原因疾患がない」という前提です。気になる関節症状が続く場合は、狭義の「更年期関節痛」以外の疾患がないか、医療機関にご相談ください。

この記事に関しましてご質問がある方は、contact@parkeastmed.com まで、お気軽にご連絡ください。

参考文献

Menopausal arthralgia: Fact or fiction. Malgorzata Magiano, Maturitas. 2010:67(1);29-33
Musculoskeletal pain and menopause. Fiona E Watt, Post Reprod Health. 2018:24(1);34-43
The musculoskeletal syndrome of menopause. Wright VJ, et al. Climacteric. 2024:27(5);466-472
Equol: a metabolite of gut microbiota with potential antitumor effects. Jing Lv, et al. Gut Pathog. 2024:16(1);35

(1) 更年期の関節痛の原因にはどんなものがあるのですか?
(2) 狭義の「更年期関節痛」と関節リウマチを見分けるには?
(3) 狭義の「更年期関節痛」に対してはどのような治療がありますか?

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